脳障害(低酸素性虚血性脳症)について
蘇生による水頭症  右の写真はある被害者の脳です。頭の中の大部分を占める黒い部分が水、頭蓋骨に張り付くようにある薄く白い部分が脳です。 低酸素状態が続くと手足を動かせなくなるとか知的障害が出るくらいにしか思わないでしょうが、実はもっともっと悲惨なことになります。

 低血糖や低体温の影響で呼吸停止になると 徐々に脈が弱まってきます。そして、真っ先にやられるのが運動機能です。

 そして、気づいたときにはすぐに蘇生処置に入るのですが ここで弱まった脈を回復するために昇圧剤が使われます。 この際、一気に血圧が上がるために 脳内出血を起こすことがあります。

 その後は保育器に入れられ ありとあらゆる穴からチューブを入れられてスパゲッティ状態になります。 蘇生後 数時間はちゃんと眩しい等の反射があったとしても、それは徐々に失われていきます。

 数日は様子見の状態が続くのですが、ここで脳にダメージがあると脳が萎縮し始めます。逆に脳内出血があった子は出血が吸収されることもあれば、脳内の水を排出するためのフィルタが詰まり 写真のような水頭症となります。

 その間、母親も悲惨です。元気で生まれた子が胸の上でこんな事故に遭い、後悔の念に幾度も襲われます。想像してください、我が子が生と死を彷徨っているなか 元気な赤ん坊の声が聞こえる病棟で24時間、退院まで過ごさなければならないのです。

 退院してからも母の苦悩は続きます。母乳の方がいいという信仰のなか3時間おきに起きて搾乳し、冷凍保存して病院に運びます。搾乳中なにを思うでしょうか。

 運良く呼吸器が外れることもあれば、自発呼吸が全くなくなってしまう子もいます。幸い自発呼吸ができても、舌が動かせないために舌が喉に詰まり窒息しそうになります。もちろん自分でミルクを飲むこともできないため鼻から胃までチューブを通します。 そして、細い血管に何度も点滴を差すことで血管はめちゃくちゃになっていきます。

 脳波が全くない子は一切の反射がないのですが、乱れてても脳波がある子もいます。脳波があっても いいことばかりではなく、手足に力が入りっぱなしになり 反り返ったまま変形していく拘縮が起こります。 また、てんかんによるけいれんが起こり 意図せずに体が動き、まばたきもできない目から涙を流して苦しむことになります。

 最終的には唯一残った綺麗な体にメスを入れて、気管切開をし 胃瘻を造って退院することになります。地域によっては社会支援体制が不十分で退院できない子も多々います。

 気管切開をして胃瘻を造って家に帰れて幸せだろうと医者は言います。しかし、よだれが気管に垂れ込み、一生むせ続け 窒息の恐怖とともに生活することになります。親は5分も子供から離れることはできません。そして 胃瘻からは胃液が漏れ、毎日服を濡らします。夜は体温低下やけいれん、唾液の吸引でアラームが鳴り響き安心して眠れる日はありません。

 子供の脳は一部機能しなくなっても、他の部分で補うことができるといいます。しかし、全体的に萎縮してしまえばその希望もありません。これが現実なのです。